費用対効果の高いサーマルレンズの統合に関するガイド:防衛および自動運転車アプリケーションで知っておくべきこと

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完全な暗闇の中で、あるいは煙、まぶしい光、霧を通して撮影する熱赤外線(IR)イメージングは​​、最新の防衛システムや自律システムにとって不可欠な技術です。夜間に歩行者や脅威を検知できる自律走行車(AV)や、無人航空機やカウンターUAS作戦で重要な役割を担うセンシング機能を実現するサーマルイメージングは、可視光カメラシステムが役立たない状況で必要な「目」となっています。

IRカメラシステムを特定の用途向けに調整する場合、綿密かつ適切なレンズ設計が非常に重要です。可視光カメラと同様に、サーマルカメラのイメージング機能は、その大部分がレンズユニットの特性に依存します。レンズユニットは、コスト、製造時間、そして最も重要なパフォーマンスに影響するからです。

IR画像の品質における光学系の役割

可視光カメラのレンズは、収差を軽減し、幅広い条件下で鮮明な画像を得るために、異なる種類のガラスを用いた複数の要素で成り立っています。サーマルレンズでは独自のレンズ構造や素材が使用されていますが、検出器の限界や材料の制約により、可視光デジタルカメラで使用されるレンズとは異なります。

中波長IR(MWIR)および長波長IR(LWIR)検出器は、温かい物体から放射される、はるかに波長の長い赤外線を感知します。IR検出器のピクセルは大きく、低解像度の焦点面アレイでも、製造コストは可視光カメラと比べてはるかに高価です。特に防衛やAVなどの用途では、レンズによって画質が損なわれることのないよう、サーマルレンズの設計は、すべてのピクセルを有効に活用できるものでなければなりません。

一般的なガラスは赤外線を遮断するので、サーマルシステムには、ゲルマニウム、シリコン、セレン化亜鉛、カルコゲン化ガラスなどの特殊なレンズ材料が必要です。これらの材料は、最小限の信号損失でMWIRおよびLWIR波長を透過させると同時に、反射防止コーティングによって表面反射をさらに低減し、IR透過率を最大化します。

全体として、サーマルレンズは、限られた種類のレンズ材料を用いながらも、光を非常に効率的に集め、環境要因による影響を低減し、検出器アレイ上に高コントラストな画像を投影する必要があります。

表1:測定波長とレンズ材料

測定波長

一般的なレンズ材料

屈折率

一般的なアセンブリのレンズ枚数

中波長赤外線

3~5µ m

Si、Ge、ZnSe、ZnS、カルコゲン化ガラス、CaF2

1.4~4.0

固定焦点の場合は4~6、ズームの場合は7~10

長波長赤外線

8 - 14 µm

Ge、ZnSe、カルコゲン化ガラス

2.4 - 4.0

固定焦点の場合は1~4、ズームの場合は4~6

MWIRおよびLWIRカメラにおける光学上の重要な考慮事項

以下に、サーマルカメラに関する主な光学用語と、用途に合わせてパフォーマンスを最適化する上で重要な光学仕様や要件の定義を示します。

焦点距離、FOV、IFOV:焦点距離は、視野(FOV)、すなわちカメラがセンサーの焦点面アレイ上に捉えることができるシーンの全体範囲を決定します。焦点距離が短ければ広角の視野が得られ、長ければ狭く拡大された視野になります。瞬時視野(IFOV)は、ピクセルごとに検出可能な最小のディテールを表します。焦点距離は、シーンカバレッジ(FOV)と微細なディテールの解像度(IFOV)のバランスを取ります。

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図1. FOVと焦点距離の図解(画像:Teledyne FLIR OEM)

F値と透過率:F値(f/#)は焦点距離とアパーチャ(絞り)直径の比率であり、集光量を制御します。また、画像をぼやけさせる光の回折は、波長とf/#の積に比例します。f/#が低いほど、アパーチャが大きくなり、光の利用効率が高まるとともに、回折によるブラー(ぼやけ)も少なくなります。透過率は、センサーに到達する熱放射の測定値です。低いf/#と高い透過率は、どちらも強力なセンサー信号を確保しますが、低いf/#は、レンズの重量、複雑性、コストの増大を招きます。

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図2. F/#の表記(画像:Teledyne FLIR OEM)

変調伝達関数(MTF):さまざまな空間周波数におけるコントラスト再現性を定量化します。MTFが高いほど鮮明な画像が得られ、隣接するピクセル間のわずかな温度差をより正確に検出できます。

標準構成または再イメージング構成: 一部のLWIRとほぼ全部のMWIR焦点面は、動作中に低温まで冷却されるため、焦点面の周囲にデュワー容器が必要です。したがって、レンズ絞りはデュワー窓の近くに配置する必要があります。通常、再結像レンズ構成が必要です。

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図3. 非冷却型検出器(左)は通常、標準的なレンズ系を採用するのに対し、冷却型検出器(右)は一般に、再結像レンズを必要とする(画像:Teledyne FLIR OEM)

測定波長:どちらの帯域も熱放射を検出しますが、体温による放射はLWIR領域でピークに達します。また、LWIRカメラは、f/#の小さいレンズと組み合わせると、多くの場合、室温で動作します。MWIRカメラは冷却型焦点面を必要としますが、エンジンや機械などの熱源の検出に適しています。この種のカメラの優れた感度には、再結像レンズ構成など、複雑性とコストが伴います。とはいえ、f/#の要件は緩和されており、MWIRで利用可能な光学材料も増えています。

サーマルイメージング用のレンズ設計における3つの主な課題

熱システムには、波長の影響、熱管理の要件、サプライチェーンの制約という、3つの主要な設計課題があります。

回折は、レンズの入り口で波が広がる現象であり、焦点面アレイにおける画像の鮮明さに影響を及ぼします。検出器のピクセルが小さくなると、隣接するピクセル間の画像コントラストを確保するために必要なレンズのf/#が小さくなります。MWIRは波長が短いため回折が少なく、したがって、冷却型検出器の高い感度を補完するF/3~F/5のアパーチャでも、許容可能なピクセルコントラストやMTFが得られます。LWIRによる回折ブラーでは、ピクセルコントラストを提供するため、より広いF/1~ F/2のアパーチャが必要です。また、集光アパーチャが大きいため、非冷却式センサーの低い光子感度も補正されます。

IRレンズの材料は温度に敏感です。適切に制御されていない場合、わずかな温度変化によって最適な焦点位置がずれる可能性があります。しかし、サーマルカメラは非常に広い温度範囲にわたって鮮明な画像を提供する必要があります。レンズの焦点を維持するには、2つの設計アプローチがあります。受動的熱補償(パッシブアサーマライゼーション)は、熱膨張を補償する特性を持つ光学材料や機械材料を用いて焦点位置を安定させる手法であり、コンパクトで軽量なシステムに最適です。能動的熱補償(アクティブアサーマライゼーション)では、モーター駆動の焦点調整を制御する温度センサーを採用します。この手法は、距離補正のために電動フォーカスが採用されている大規模なシステムに適しています。

IRレンズの材料は、高純度の工業用結晶またはカルコゲン化ガラスですが、どちらも複雑な国際サプライチェーンを介して供給されます。サプライチェーンの脆弱性により、上述したすべての技術的課題がさらに深刻化します。ゲルマニウムの供給は、特定の国々における精製事業に依存しています。カルコゲン化ガラスには、より広くコモディティ化されている硫黄、セレン、ヒ素、テルルが必要ですが、ガラス製造事業は依然として限られた地域でしか行われていません。IRレンズの材料の多くは、地政学的リスクによる供給制約の影響下にあります。そのため、持続可能なIRレンズ生産のためには、調達先の多角化やリスク低減策の策定が欠かせません。

レンズの選択基準:固定ズームと連続ズーム

固定視野(FOV)レンズか、それとも連続ズーム(CZ)レンズかという選択は、設計上の根本的な決定事項であり、コスト、複雑性、運用能力に影響を与えます。

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図4. 固定レンズLWIR(左)およびCZレンズ冷却型MWIR(右)カメラモジュール(画像:Teledyne FLIR OEM)

固定FOVレンズは、単一焦点距離ならではのシンプルさを備え、可動部が少ないため、ズームレンズと比べて軽量かつ安価で、信頼性も高いという利点があります。これらのレンズの多くは受動的に熱補償されているため、焦点は工場で設定され、顧客が調整する必要はありません。広角構成(>60o)では、ディテールを抑えつつ、より広い視野角のシーンを捉えられます。一方、中程度の焦点距離の設計(10 o~50o)では、カバレッジと倍率のバランスが取れます。望遠タイプ(<8o)は、より高い倍率と、長距離での識別を可能にするIFOVを提供しますが、動きに対する感度が高まるため、より高度な安定化が必要です。

CZレンズは、14~75mmや50~1000mmといった範囲で焦点距離を変化させながら焦点を維持する高度な可動式レンズ群により、動的なFOV調整が可能です。大きいFOVと微小なIFOVを必要とするダイナミックな環境に最適です。こうした運用上の柔軟性は、複雑性とコストの大幅な増大を伴います。IR CZレンズには非常に多くのコンポーネントがあり、制御電子機器を必要とする電動ズームとフォーカス駆動機構も必要です。

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図5. 折り畳まれたMWIR 25-250 CZレンズ(左)とMWIR 15-300 CZレンズ(右)(画像:Teledyne FLIR OEM)

まとめると、システムエンジニアがIRカメラアプリケーションに最適なレンズ構成を決定する際、用途を評価した上で、画質、コストの制約、柔軟性への要求のバランスを取る必要があります。

パフォーマンスと感度の最適化

レンズの集光効率は、MWIRおよびLWIRカメラの主要な感度指標である、ノイズ等価温度差(NEdT)に直接影響します。NEdTは、検出可能な最小の温度差をミリケルビンで測定した値です。たとえば、NEdTが20 mKのf/1.0 LWIRカメラは、50 mKのf/1.55カメラと比べて感度が2.5倍高くなります(ただし、感度はNEdTに対して厳密に線形な関係にあるわけではありません)。

光学設計は、カメラのパフォーマンスに根本的な影響を与えます。f/#値が低いほど、より多くのエネルギーが透過できるため、画像の鮮明さと感度が向上します。要素の材料およびARコーティングは、検出器に到達する赤外線放射を最大化するものでなければなりません。収差を最小限に抑えた高品質なレンズで高いMTFを実現する一方、焦点距離によって倍率と検出範囲を設定します。

今後の展望と統合に関する考慮事項

サーマルレンズの開発は、ゲルマニウムなどの希少な材料への依存を減らして経済的な持続可能性を確保しながら、より小型で軽量、かつ費用対効果の高い設計に向けて進化を続けています。この進歩により、暗闇だけでなく霧や煙などの遮光物があっても状況を把握できる、AVおよび防衛用途におけるサーマルイメージングの利用が拡大すると予測されます。

統合を成功させるには、光学設計上の選択とシステムパフォーマンスとの間にある基本的な関係を理解する必要があります。材料の制約、波長固有の影響、および熱管理の要件は、システム機能のあらゆる側面に影響を与える相互依存性を生み出します。防衛システム、自動運転車、産業用監視ソリューションのどれを開発する場合にも、サーマルイメージングの有効性を最大限に発揮するには、最適な光学設計が極めて重要です。

詳細については、https://oem.flir.com/categories/infrared-lenses/をご覧ください。

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